Part 9:「試練の夜明け」
夢の中で私は、闇が少しずつ薄れ始める夜明け前の世界にいた。
空気は張りつめ、静寂の中に不穏な気配があった。
どこからか聞こえてくる声。
「彼は逃げる準備をしている。だが、それが許されると思うな」
その声の主は、黒いローブを纏った“観察者”だった。
彼らは何も語らず、ただ物事の流れを記録する存在。けれど、今回は違った。
彼らすらも、ダミアン・ストーンの動向に注目していた。
ダミアンは、密かに国外への逃亡計画を練っていた。
だがその情報はすでに漏れていた。
“影の組織”が漏らしたのではなく、内部の誰かが「最終手段」として流したのだった。
私は、夢の中でその一連の流れを見ていた。
空港ではなく、個人所有の飛行艇。
逃亡先は、遥か東の砂の国――強固な同盟を結んだ国のひとつ。
ダミアンの表情は険しく、隣には誰もいなかった。
家族の姿もなく、彼はひとりで飛ぼうとしていた。
けれど、その時だった。
計画の地図が突然、黒い墨で塗りつぶされた。
彼の手元にあるはずの情報が、次々と“白紙”になる。
パスポート、通信機器、口座、そして協力者たちの名簿――
それらがまるで存在しなかったかのように消えていく。
「誰かが動いた」
私は直感的にそう感じた。
それは、ダミアンを見限った者か。
あるいは、彼を止めたいと願った“まだ純粋な誰か”か。
ダミアンは空を見上げた。
「こんなはずでは…」と、唇が動いたのを私は確かに見た。
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