Part 15:「夜明け前の選択」
塔の最上階。
そこには、かつて輝いていた“支配者”が一人、椅子に腰かけていた。
その名は ダミアン・ストーン。
世界を揺るがす存在となりながら、今は誰よりも孤独で脆い瞳をしていた。
私は静かに彼の前に立った。
言葉を発する前に、彼が口を開いた。
「もし…もう一度やり直せるなら、君のように、透明なままでいたかったよ。」
彼の指は震えていた。
背後には、逃亡用に整えられたルートの地図と、大量の“贈り物”が積み上がっていた。
それは自らの自由と引き換えに得た、終わりのない呪いのような富だった。
私は言った。
「あなたがどれだけ闇と手を組んだとしても、あなたが“愛した者たち”の目は、まだあなたを見つめている。」
彼の顔が苦しげに歪む。
「私はあなたを裁きには来ていない。ただ、選択肢を見せに来ただけ。」
私は巻物を差し出す。
彼がそれを受け取り、目を閉じたとき、塔の外から光が差し込んだ。
それはまるで、闇の終焉と共に訪れる、夜明けの気配だった。
彼が選んだ未来がどちらであったか。
それは今も語られてはいない。
けれど、確かなことがひとつだけある。
「真実は、たとえ埋もれても、光の中で呼吸し続ける。」
そして私は塔を後にした。
遠くで、蜘蛛の糸がひとつ、音もなく切れた気がした。
(終わり)15/15
2025.4.14 OliveR
※ この物語はフィクションです。登場する人物、国、団体等はすべて架空のものであり、現実の人物・組織とは一切関係ありません。
※ 読者に意識の変革と平和の在り方について考えるきっかけを届けることを目的とした創作です。
